文:立石なるみ
「人生最高のパーティーの準備はいい?」深夜、テレビをつけたら流れてきた怪しげなコマーシャル。普通なら見て見ぬふりをするところだが、生真面目で退屈な自分にコンプレックスを抱く仕事人間のコナーは、心を見透かされたような怪しいCMに吸い寄せられ、電話をかけてしまう。彼の前に現れたのは、パーティー好きのゴブリン3人組。彼らの暴れっぷりは凄まじく、几帳面に掃除され、ピカピカに磨き上げられていた家を落書きだらけにする。そして、大切なオブジェや夫婦の写真も無残に粉砕。大人の手を煩わせまくる、厄介極まりない“悪ガキ”たち。だが、彼らがもたらす容赦なき混沌が、「退屈な自分」をぶち壊す刺激となっていく。これは、コナーの成長譚である――!

本作は、SFスプラッターコメディ映画『サイコ・ゴアマン』(2020年)で世界中の映画マニアを熱狂させたスティーヴン・コスタンスキ監督の最新作。突き抜けたユーモアと手加減なしのバイオレンス描写に心を打ち抜かれたファンにとって、これ以上ない最高のプレゼントが到着した!
魅力的なポイントは、ゴブリンらはCGではなく「パペット(人形)」で描かれているところだ。『サイコ・ゴアマン』同様に一貫してCGに頼らないアナログな“手作り”にこだわった。この「パペット」を用いる手法は『グレムリン』(1984年)、『グーリーズ』(1985年)、『クリッター』(1986年)、『パペット・マスター』(1989年)といった、映画史に残るレジェンド級パペット映画へのオマージュでもある。そして、そこに『フランキー・フリーコ』の名を連ねよう。筆者はその昔、親がレンタルビデオ店で借りてきてくれたような、あのちょっと怪しくて愛すべきマニアックな作品の手触りを思い出して胸が熱くなった。CG技術で、望んだ映像を自在に生み出せる今だからこそ、スクリーンの向こうに手作りの創意工夫が見える人力の熱量と温かみがたまらない。一切の隙がない今の映画にはない愛おしい余白が、私たちの想像力を心地よく膨らませてくれる。
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コスタンスキ監督の作品を語る上で欠かせないのが、観客や劇場スタッフたちの“作品愛”だ。2023年11月27日、シネマート新宿で『サイコ・ゴアマン』が一日限定で再上映された。初公開から約3年が経っていたにもかかわらず、劇場はものすごい熱気に包まれていた。当時、筆者はその熱気の渦中であるシネマート新宿でスタッフとして働いていた。そこで目にしたファンたちの気合い。劇場スタッフは、作中に登場する人気キャラクター“脳みそくん”や“デスストラッパー”を段ボールや粘土を使って制作。ロビーに展示し、来場客をお出迎えした。映画が手作りなら、劇場も手作りで応える。独自のスタイルで作品愛を爆発させた。当日はコスタンスキ監督が来日して舞台挨拶に登壇。スタッフによる制作物を見て、喜んでくれた姿が今でも鮮明に記憶に残っている。ちなみに、シネマート新宿のエレベーターにはその時に監督が残した直筆サインがあるので、劇場に足を運んだ際はぜひチェックしてみてほしい。今回の新作もシネマート新宿をはじめとした各上映劇場で、お客さんやスタッフたちの歓待を受けることだろう。
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また、本作は監督キャリア初(?)のお子様も一緒に楽しめる仕上がりになっている(あくまでも、筆者目線)。血は出る。しかし、過激なグロ描写は抑えられ、80年代ポップな世界観が全開だ。ネオンカラーが躍る色彩や時代設定は、昔を懐かしむ大人から、レトロを新鮮に感じる子供まで、みんなでポップコーンを食べながら楽しめるのではないだろうか。
一見すると、ゴブリンたちが人間を振り回すドタバタコメディだが、その根底にあるのは、毎日をなんとなく生きる人を元気づけてくれる優しいテーマだ。最初は暴走するゴブリンたちを止めようと必死だったコナーだが、物語はやがて彼らとタッグを組み、ゴブリンたちの住む世界を支配する悪の大統領を撃退する展開へと続いていく。この予想外の共闘関係が、映画をさらに盛り上げ、コナー自身が押し殺していた本当の感情、忘れていた「人生を楽しむエネルギー」を取り戻していく。
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ノスタルジーな思いに耽るもよし、“パーティー野郎”になるもよし。コスタンスキ監督が並々ならぬ愛を込めて作った、この最高に楽しくて愛おしいモンスター・パーティー。きっと映画館を出る頃には、元気をもらえているはずだ。
『フランキー・フリーコ』
7.3(金)よりシネマート新宿ほか全国順次公開
監督・脚本・編集:スティーヴン・コスタンスキ 製作:マイケル・パスト、パシャ・パトリッキ 出演:コナー・スウィーニー、アダム・ブルックス、クリスティ・ワーズワース
2024年|85分|カナダ|原題:FRANKIE FREAKO|5.1ch|ビスタサイズ 日本語字幕:平井かおり 配給:クロックワークス
© 2024 Hangar 18 Freako Movie Inc
【執筆者】
立石なるみ(たていし・なるみ)
元・シネマート新宿スタッフで、ライター修行中。人生ベストムービーは『ゴーストワールド』。月刊『映画秘宝』8月号に『マジカル・シークレット・ツアー』評を執筆。映画秘宝公式noteにて取材記事掲載中。
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