「映画と共にあらんことを」イオンシネマ海老名が33年の歴史に幕を下ろした。

レポート

取材・文:後藤健児

 2026年5月17日、神奈川県海老名市のイオン海老名がニチイやサティ時代を含めて46年の歴史に幕を下ろした。それに伴い、イオンシネマ海老名も33年の長きにわたる映画館興行から、この日にその役目を終えた。日本初のシネコンとして誕生し、日本国内で最初にTHX認定を受けた(当時は旧ワーナー・マイカル・シネマズ海老名)、スクリーンを有する映画館。国内での『スター・ウォーズ』上映劇場の聖地とも言われ、近年では『KING OF PRISM』の応援上映でキンプリファンにも親しまれてきた。

ニチイ、サティから続いたひとつのショッピングビルの歴史が終わる
長い歴史を持つ施設にはそれだけの思いが寄せられる

 最終興行を迎えるにあたり、4月からは『スター・ウォーズ』シリーズ全作のTHX上映を実施。最終日もファンへの恩返しとばかりに『KING OF PRISM-Your Endless Call-み~んなきらめけ!プリズム☆ツアーズ』(2025年)応援上映などが行われ、上映各作品のチケット完売が続出。クロージング上映は、旧3部作の最終作品『スター・ウォーズ ジェダイの帰還』(1983年)。レイア姫やチューバッカなど、思い思いの扮装に身を包んだ観客たちがスクリーンを見つめる中、これが本当にお別れとなる最終回の上映が始まった。

イオン館内も『スター・ウォーズ』の装飾に彩られる
イオンシネマ館内には『スター・ウォーズ』ポスターが並ぶ

 上映後には同スクリーンでセレモニーが開かれ、加藤曉司支配人だけでなく、神奈川県内のイオンシネマ支配人たちも結集。さらには、駅前にあるライバル館ともいえるTOHOシネマズ海老名の石黒支配人も登壇。イオンシネマ海老名を“最高のライバル”と評し、互いに海老名を映画で盛り上げてきた相手の功績を讃えた。

劇場へ寄せられた花束
キンプリファンの聖地でもあったイオンシネマ海老名。
キンプリファンの結束力、マナー、行儀のよさに
この日、筆者は感銘を受けた

 熱気と映画愛が充満していたのはスクリーン前だけではなかった。ロビーもこの日は朝からごった返し、『スター・ウォーズ』シリーズのポスター群や、イオンシネマ海老名誕生からの33年の映画興行ランキング表、そして観客から劇場へ感謝を伝えるメッセージボードを皆がじっくりと眺め、写真撮影などをして過ごしていた。最終回の上映が始まった以降も売店では、ポップコーンのテイクアウトを販売し続け、最後の思い出にと多くの来場者が買っていた。

愛にあふれたメッセージボード
ポップコーンをお土産として筆者も購入

 クロージングセレモニーを見届けた観客たちが、スクリーンのある上階を降りて目にしたものは――自らをお見送る来場者たちの姿だった。ロビーを埋め尽くした来場者たちは、退場してくる最終回上映の鑑賞者たちを笑顔と拍手で見送ったのだ。観客が観客をお見送るという前代未聞の事態。キンツアTシャツを着ている者がいれば、自然とキンプリファンたちからは掛け声があがる。満面の笑みで花道を通過していく観客たちのうれしそうな表情は本当に忘れられない。
 ロビーにいる来場者たちにも、支配人や副支配人らから感謝の言葉が伝えられる。劇場の運営を支えてきたスタッフたちも来場者の前にずらりと並び、来場者から大きな拍手を受けた。彼女や彼がいなければ、映画館は成り立たない。受けるべき拍手だ。

映画館を支えてきたスタッフたちも映画と共にある

 いよいよ、閉館の時間となり、ロビーに留まっていた者たちもその場をあとにした(転倒事故など起きないように、スタッフ誘導に従い、行儀よく落ち着いて行動する品位の高さがあったことを記す)。

映画館が愛されるとはどういうことか。
その一端をこの日、知れた気がする

 地元民に長く愛され、遠方の映画ファンも引き寄せた、唯一無二の存在感を放ってきたひとつのシネコンが終わりを迎えた。愛される映画館はミニシアターだけじゃない。大資本が運営するシネコンだって、そこにはひとり一人の人間が存在して、映画を届けるために日々、奮闘しているのだ。通う者もそうだ。人がいて、映画が流れる。それだけでドラマが生まれる。生まれて初めて観た映画がここだった。人生で大切な時間をここで過ごした。それはもうかけがえのない体験だ。映画と共にある。それがなにより大事なことだ。
 「May the Movie be with you.(映画と共にあらんことを)」この言葉は、『スター・ウォーズ』の名セリフ「May the Force be with you.(フォースと共にあらんことを)」を踏まえた、イオンシネマ海老名からのメッセージ。それに返すように、来場者が寄せたメッセージボードのあるひとつの言葉を引用させていただき、本稿を締めたい。

「MAY THE FORCE BE WITH AEON CINEMA」