日の目を見よ映画たち①『私はゴースト』『ニールジャー』『恐怖症』

コラム

文:後藤健児

 映画祭で上映されたきりだったり、特集上映の一本としてあまり目立たず公開された作品、劇場未公開でDVDや配信スルーとなった作品の中から今一度、日の目を見てほしい傑作を紹介。今回は2016年に日本で初披露された3本をお届け。

『私はゴースト』(2012年)(アメリカ)
 「未体験ゾーンの映画たち」で上映された隠れた傑作。スクリーン上映時はノーマークでしたが、DVD発売後にレンタル店で並んだジャケットが目を引き、あらすじも読まずにジャケ借り。白目の女性の正面アップがザラついた質感で写る、昔の心霊写真本を思わせるジャケット写真はインパクト大。そして、内容もそれ以上に衝撃的です。タイトルがすでにネタバレしてるんですが(原題も「i am a ghost」)、一軒の屋敷を舞台に、主人公の幽霊が同じ日常を繰り返す様が、定点カメラのような固定の構図で捉えられていきます。説明もなく繰り返される幽霊の日常は不可解で、常に何かが起こりそうな不穏さも伴い、深夜に一人で観ていると、恐怖の想像が際限なく掻き立てられて冷静ではいられなくなります。後半では一転、畳み掛ける暴力が待ちうけ、その先に訪れる真実の判明にカタルシスを得ます。聞くところによれば、制作費は100万円かそこらしかかかっていないそうですが、映画は本当にアイデア次第なんだなと再認識させられる作品です。

『ニールジャー』(2016年)(インド)
 インディアン・フィルム・フェスティバルで鑑賞。1986年に実際にカラチ空港で発生したハイジャック事件を描いた実録ドラマです。タイトルのニールジャーは、客室乗務員として人質救出に奔走した女性の名前。映画の冒頭、実際のニールジャーの母親が出てきて観客に語りかけるので、いったい何が始まるのかと驚きました。なぜ本人が出てこないのかと疑問を持ちましたが、本編を観て、ああそうか……と。実話だからか、フィクションのハイジャックものでは見られない展開が多くあります。例えば、保安規定に従い、乗客を置いて全力疾走して逃げていく機長と副機長は創作だったらまず描かないでしょう。とはいえ、実録もののハードな暴力映画でも、歌って踊るシーンがあるのは流石インド映画。ニールジャーはインドでは知らない人はいないくらいの英雄らしく、インドにおける女性の地位向上にも貢献した偉人とのこと。場内ではすすり泣く女性の声が多く聞こえたのも印象深かったです。

『恐怖症』(2016年)(インド)
 こちらもインディアン・フィルム・フェスティバルで鑑賞。暴漢に襲われたトラウマから広場恐怖症となり、引きこもり生活を続ける女性。彼女は他の人たちには見えない、“何か”の存在に怯え始めます。いわゆるハウスホラーもので、基本的には家の中だけで物語は進みます。リハビリのためにVRで外出訓練をしようとすると、バーチャルリアリティー上に亡霊のような存在が見える面白さ。監視カメラや携帯動画等、視点にも凝っていることにより、舞台がほぼ変化しなくても飽きさせません。終盤にはそれまでの伏線がすべて回収され、『シックス・センス』(1999年)を超える驚きと感動の結末が待っています。すでにハリウッドリメイク決定しているのでは?と思ってしまう脚本のウマさに舌を巻く傑作。