目黒シネマ「ミッドナイトムービー セレクション」で考える、映画館がレコメンドする意義。

コラム

文:後藤健児

 東京・目黒シネマで2026年3月15日~3月21日の期間、特集「ミッドナイトムービー セレクション VOL.3」が開催された。国や時代、ジャンルを越え、カルト的人気を誇る作品群をセレクトする人気企画。今回の第3弾は以下の全15作をラインナップ。

『フリークス』(1932年)
『アルチバルド・デラクルスの犯罪的人生』(1955年)
『ピンク・フラミンゴ』(1972年)
『マルチプル・マニアックス』(1970年)
『ウィッカーマン final cut』(2013年)
『食人族 4Kリマスター無修正完全版』(1980年)
『フェイズIV 戦慄!昆虫パニック』(1974年)
『リキッド・スカイ 4Kデジタル修復版』(1983年)
『バーバレラ』(1968年)
『バロン』(1989年)
『ダーク・スター デジタルリマスター版』(1974年)
『ヘヴィメタル』(1981年)
『ロードゲーム』(1981年)
『笑む窓のある家 4K修復版』(1976年)
『ZEDER ゼダー/死霊の復活祭』(1983年)

目黒シネマ看板

 リバイバル上映されて話題となった作品や、目黒シネマだけの独占的な上映作もある。すべて通いたかったところではあるが、筆者は『フェイズⅣ戦慄!昆虫パニック』『バーバレラ』『ヘヴィメタル』の3本を鑑賞できた。
 開催期間中、地下へと続く階段横の壁には、今回の上映作以外にも映画史をときにファンタジックに、ときにえげつなく彩ってきた名作群のポスターやチラシが所狭しと張り巡らされ、訪れた観客を夢と悪夢が混在する映画空間へいざなう。

いろんな意味での名作群のチラシ、ポスター群
眺めているだけで時間がいくらでも過ぎてしまう

 『フェイズIV 戦慄!昆虫パニック』はこれほどにクールな人類敗北映画もそうそうない。ケースに入った殺人蟻を覗き込むリン・フレデリックの巨人のような顔を捉えた有名なショット。少女が虫を見ているだけなのに、映画とは撮り方次第でこんなにも神々しい画が出来上がる。

『フェイズIV 戦慄!昆虫パニック』

 『バーバレラ』は全編に漂う“緩さ”がありがたい。“おバカ”でも“おふざけ”でもない“緩さ”がSFには必要との確固たる信念。ドラえもんが素足ですむのは実は常に少し浮いてるからとか、もはや冗談の域だが、それと近しい。

『バーバレラ』

 最高にカッコいいアニメ映画のひとつ『ヘヴィメタル』。時代、惑星、次元を超えて存在する悪の発光球をめぐる、邪悪版『火の鳥』ともいえるオムニバス。創作物における“COOL”とはどういう感覚なのかを、このアニメで初めて知った気がする。

『ヘヴィメタル』

 他にもカルト映画として名高い『フリークス』や『ピンク・フラミンゴ』(今回も大入りだったらしい。この映画を好きな人は本当に多い)等々、家でひとりで観るのもいいけれど、こうやって皆でカルトの紐帯を築きながら劇場内で観ることの喜びを噛みしめられる作品群が上映された。
 今回も映画館ではなかなかお目にかかれない作品を鑑賞できるまたとない機会となったが、ここで思うのは映画館がセレクト、リコメンドすることの意義。今回上映された作品の一部はサブスクの配信サービスで観られるものもあるが、上位にレコメンドされることはまずない。また、ホラーなどのカテゴライズしやすいジャンル系作品はアルゴリズムによって回収され、おススメとして表示される可能性はあっても、仕分け不能のカルト作は埋もれやすい。かつてレンタル店では、ジャンル分け不能の作品群を「カルト」として扱い、カルト映画コーナーという棚がよくあった。スタッフの目によるセレクトはときに唯一無二の映画空間を形成していた。
 映画は観られるリスト内に存在するだけでは不十分で、いかに作品同士の“連関”に目を向け、ひとつながりの群れとしてお客さまに提示するかが重要だ。そういう意味でこういった特集はシネコンでは成立しづらく、ミニシアターならではの“技”なのだ。目黒シネマが贈る「ミッドナイトムービー セレクション」の第4弾ではいったいどんなカルトな映画が待っているのか。いまから楽しみだ。