文:後藤健児
※本記事は、メンズファッション誌「Samurai ELO」への寄稿文を加筆・修正したものです。
皆さん、ゾンビ映画はお好きですか? 一口にゾンビ映画と言っても、死霊の群れを銃火器で蹴散らすアクションものや怪談風のおどろおどろしいもの、果てはコメディ、ロマンスまで様々。どの作風にも共通するのは、ゾンビはかつて僕らと同じ人間だったこと。吸血鬼と同じく存在しないのにゾンビには何故かリアルさがあり、自分の死生観にまで迫るのはゾンビに自身を投影してしまうからではないでしょうか。そして誰でもゾンビになり得る、国や時代を超えた普遍性。「今、突如ゾンビが溢れかえる世界になったら?」そんな空想も楽しめます。つまり、ゾンビ映画の最大の魅力とは身近に感じられるリアリティに尽きます。世界観への没入度合いが他のモンスターホラーと圧倒的に違うのです。作品によってゾンビの捉え方が異なるのも当然で、人の数だけゾンビ観があります。十人十色ならぬ十人十ゾンビ(笑)。 また、ひっくり返った社会で銃をバンバンぶっ放したり、無人のショッピングモールで好きなだけ洋服を着替えたりする、ちょっと暗い欲望に触れてくるのも魅力。ゾンビから好きな子を守るヒーロー願望さえも叶えてくれる、あらゆる観客の欲望を具現化できる無限の可能性を持つのがゾンビ映画です。

90年代、横浜駅西口にあったTOWER VIDEOという中古ビデオ屋で購入の『ゾンビ』。パッケージ欠品のため、他作品のジャケット裏(あわれ『ジュリア ジュリア』が犠牲に)に手書きで勝手なイラストと作品紹介が。緩く、よき時代だった。
おススメゾンビ映画5選!
『ゾンビ』(1978年)
動きがノロイ、噛まれると感染する、脳が弱点。現在まで続くゾンビ三原則を生み出した、ゾンビ映画の神ことジョージ・A・ロメロ監督。彼が手掛けたゾンビ映画の金字塔がこれ。それまでも存在したゾンビものにSF風味とアクション要素を混ぜ合わせ、終末観もプラスし、ゾンビ映画を一気にスタンダードジャンルに押し上げた偉大な作品。銃でゾンビを駆逐していく爽快感や無人マーケットでのお買い物、そして人間同士の醜い争い等、後のゾンビ映画で観られるポイントがすでに全部詰まっています。ゾンビ映画を語るなら絶対観なくちゃダメ!
『サンゲリア』(1979年)
イタリアのゾンビ映画の帝王ルチオ・フルチ監督による、グログロゾンビ映画の最高峰。ストーリーはあって無いようなものですが、ウジの沸く腐乱したゾンビメイクや眼球串刺しなどの突き抜けたグロ場面のオンパレードは今も色褪せることのないパワーを持っています。仲の良い友達や彼女が集まるパーティの場で流して、グロ耐性試しをするのも一興でしょう。海中でゾンビがサメと戦う謎のシーンもあります(笑)。
『回路』(2000年)
近年は『岸辺の旅』や『クリーピー 偽りの隣人』で知られる、黒沢清監督の和製ホラー。本作に登場するのは、正確にはゾンビではなく幽霊ですが、かつて人間であった者たちがもたらす世界の終末や、いつか自分も死ぬと分かっていながらも、絶望的な死の運命に抗い続ける人間の物語はまさしくゾンビ映画そのもの。主人公がどこにでもいる平凡な日本の大学生なのも、読者の皆さんには感情移入しやすいと思います。
『ダイアリー・オブ・ザ・デッド』(2007年)
『ゾンビ』のジョージ・A・ロメロ監督作からもう一本。POV手法と呼ばれる、全編撮影カメラ主観によるゾンビ映画。自主映画を撮影中の大学生グループがゾンビパニックに巻き込まれる物語です。逃避行を続けながらも、騒動の模様を撮影してはyoutubeにアップする主人公の映画バカぶりは呆れると同時に微笑ましくもあります。スマホ時代を反映した現代ゾンビ映画としておススメ。
『ゾンビランド』(2009年)
ゾンビから好きな人を守って闘いたいという妄想を実現させてくれるのが本作。主人公が引きこもりのゲームオタクというのが現代的です。自らが作成した「ゾンビ世界で生き残る32のルール」を実践し、生き延びているのが面白い。主人公を魅了する詐欺師を演じるのは、『ラ・ラ・ランド』でアカデミー主演女優賞を受賞したエマ・ストーン!


